「……うあ……」
朋久が自分の中から引き抜かれる感覚にも、思わず声を上げてしまった。
そして抜かれた途端力が抜け、蓮は崩れるようにその場に膝を着いた。
「……っ」
しかしそのシンク下の扉――目の前に現れた自分の放ったものに、蓮は余韻に浸る間もなく現実に引き戻された。
痛む下半身に堪えながら、慌てて立ち上がり衣服を整えると、とりあえず目に入ったキッチンペーパーでソレを拭き始めた。
「はぁ〜〜……マジよかったぁ……誕生日最高……」
焦って後始末をしている蓮と対照的に、背後から暢気な朋久の台詞が聞こえた。
「てめ……っ」
全く自分の気持ちを理解していない朋久にイラッとして振り返るが、そのあまりの光景に蓮は言葉を失ってしまった。
朋久は満足そうな笑みを浮かべたまま、大の字になって仰向けに横たわっていた。
使用したコンドームを口を縛った状態で足下に放置し、未だ立ち上がったままの下半身丸出し状態で。
「あ、な? 蓮もよかったろ? コーフンするよなぁ〜。またしよーな♪ 今度は二人の時にゆっくりとさ。本当はもう2回くらいしたいけど、さすがに今日はまずいから我慢するよ〜」
蓮の視線に気づいた朋久は、何を勘違いしたのかひょいっと躯を起こし胡坐をかくと、そう言って嬉しそうに笑った。
「……こんのぉ〜〜〜」
これには疲労困憊の蓮もブチ切れた。
「ドスケベバカっ!! 今回だけに決まってるだろ! こんなところでなんて二度とするか!」
ここ最近は確かに強引に攻められれば、結局躯を許してしまっていた。
今日も断りきれなかった。
いつも以上に感じてしまったのは確かだが、でもこんな事もう嫌だ。
いつ起きてくるかもしれない母親が家にいるという状況もだが、後ろからされるのも好きではない。
あんな格好でなんて嫌すぎる。
「え? なんで? よくなかった?」
それでもなお蓮の気持ちに気づかない朋久は、意外だというように目を大きくして蓮を眺める。
「うるさいっ! 後、片づけ全部やっとけよ!!」
蓮はシンクにあった布巾を丸めて投げつけると、きょとんとしている朋久を放ってリビングを出ていった。
「え? ちょっ、蓮っ、どこ行くの?!」
「風呂!」
これから先、どんどん試合が増えていくのに、これではダメだ。
ちょっと甘やかしすぎた。
好きだとか、求められるのが嬉しいとかそんな事を言っている場合ではない。
脱衣所でじっと鏡の中の自分を見た後、目を閉じた。
そしてふーーーっと1つ、深くため息を吐くと、
――次は断る! ゼッテー流されねーぞっ!!
躯の中に残る朋久の感触に、耳に残る朋久の声に未だドキドキしている自分を戒めるように、蓮はそう心の中で誓い、迷いと一緒に勢いよくTシャツを脱いだ。
★終わり★
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オマケ4コマ あります。