FEVER〜小木津の場合
OFF発行「FEVER〜熱にまつわるエトセトラ」の小木津ver.です。
本編は各カップリングそれぞれの受子さんが「発熱」に関する話なので、こっちでは攻めが熱にうなされます。
時系列的に本編(和哉ver.)の後、修学旅行後の11月中旬です。(※本編読んでいなくても問題ありません)
ちょっと長めになってしまったので、2ページに区切りました。1Pで完結でも問題ないっちゃ問題ないんだけど小木津君出てこないので。
でもなんか最近小木津のポジションがおかしい。イケメンなはずなのに…(−−;
朝練を終え和哉が部室で制服に着替えていると、カバンの中で携帯電話が光っているのに気が付いた。
携帯を開くと、メールの着信だった。
「メール?」
和哉の携帯にメールを送って来る人物は、実家の弟か親友で恋人の小木津しかいない。
しかし、いずれもたいてい夜なので、学校が始まる前のこんな時間にメールを送ってくる事なんて今までなかった。
首を傾げながら受信ボックスを開くと、小木津からだった。
すぐ学校で会うのにわざわざなんだろうとメールを読むと、
「熱ぅ?」
思わず声を上げてしまった。
「和哉、どうした?」
その声に、隣で一緒に着替えていたチームメイトの蓮が、驚いて声をかけた。
「あ、ごめん。小木津から熱出したから今日学校休むってメールが来てて」
メールは、学校を欠席するという連絡だった。
昨日までそんな兆しは少しも見られなかったので、意外すぎてビックリした。
「アイツが? 昨日元気だったじゃん。サボりなんじゃねーの?」
同じように蓮も昨日の小木津の様子を思い出し、あからさまに疑念に満ちた声で呟いた。
蓮は小木津と小学校から一緒で、家も近く所謂幼なじみだと言うが、何故だか顔を合わせる度に小競り合いを始める。
二人の諍いはいつも些細な理由で、言い争いをしている二人を見ていると、和哉は仲が悪いとか嫌いあっているというより、
お互い何かを誤解していてるだけのように思えてならない。
蓮も小木津も大事な友達なので、出来れば仲良くなって欲しいと思う和哉は、同じく二人と小学校から一緒で主将の石岡と組んで、
最近少しずつ距離を縮めようと色々と画策している。
その成果なのか、最近は二人で話をしている姿を見かけるようになった――が、
「なんとかは風邪引かないっていうしなー」
まだ小木津に対する蓮の棘は消えない。
「でも、ホラ熱出たって。アイツ俺にそんな嘘つかないよ」
そんな蓮に苦笑いを浮かべながら、和哉は小木津からのメールを見せた。
「……あーそういや、お前も先週2、3日休んでたもんな」
翳した携帯を眺めると、蓮はふっと視線を反らして呟いた。
「え? ――あ、あぁそういえばそうだったね」
蓮の台詞で先週、和哉も38度という高熱を出していた事を思い出した。(※「FEVER」本誌参照)
本格的に野球を始めた8歳頃から、父親に健康管理を徹底されていた和哉が、あんなに熱を出したのは初めての経験だった。
高熱に気付かず逆にテンションが上がっていた和哉の異変に小木津が気付き、和哉を保健室に連れて行ったのだった。
そして保健室で小木津にキスをされた。
「俺に伝染せよ」と言って、舌まで絡めてキスをしてきた小木津。
――本当にあれでうつっちゃったの? バカじゃねーの、あいつっ
和哉はその後、二日も学校を休んだ。
まさかと思いつつ、自分のせいで小木津が熱を出してしまったのかもと考えていると、
「ま、あっちが好きで伝染ろうとしたんだろーから、本望だろ。お前は気にするな」
ブレザーに腕を通しながら蓮が呆れるように呟いた。
「え? な、何の事……」
頭の中を覗かれたようなタイミングと台詞に、和哉はドキッとしてシャツのボタンを留めていた手を止め、蓮の顔を見つめた。
蓮が保健室での出来事を知っているはずはない。
しかし蓮の言い方には、ただ「一緒にいたから風邪が伝染った」というだけではない含みを感じた。
蓮は和哉と小木津、二人が付き合っている事を知っている。
「……あっ」
それを思い出した和哉は一気に顔が熱くなった。
「い、いやあの別にあのっ」
「……あのさ、和哉」
蓮が何か感づいている気がして焦るが、下手な事言って墓穴を掘ってしまったらと思うと何も言えずに、あわあわするだけで和哉が蓮を見つめていると、
蓮はため息を吐いて和哉が握っている携帯を指差した。
「え、あ、何っ?」
「お前それ最後までちゃんと読んでないだろ」
「え?」
「メール。ちゃんとよく読めよ」
そう言えば、メールを読んでいる途中で蓮に話しかけられ、最後まで読んでいなかった事に気がついた。
蓮に指摘され再度読み直してみると、最後に「コレ、きっとあの時和哉からもらった熱だぜ」とハートマーク付きの一文があった。
「――あっ!」
ハッとして慌てて蓮の方を見上げると、
「とりあえず、小木津からのメールは人に見せないほうがいいと思うぞ」
そう苦笑いを浮かべながら、和哉を慰めるように和哉の肩をポンポンと叩き、部室を出て行った。
「……」
小木津と付き合っている事を知られても、今まで蓮とそういう話題を出したことはなかった。
だから余計に恥ずかしくてたまらなかった。
「〜〜〜〜〜っ」
和哉は着替え途中のままその場にうずくまり、顔を真っ赤にして予鈴が鳴るまでしばらく部室で固まっていた。
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